労働問題

経営者は自ら判断する勇気を持つべき

2020/05/31

ブラック企業についての報道多くなっているせいか、会社に対して不満や要望を訴える人が増えているように感じます。

これらの声に耳を傾けることは重要ですが、従業員の個別の意見・要望を無条件に受け入れると収拾がつかなくなり、大きな労使間のトラブルに発展することもあります。

適切なプロセスを経て労働契約を締結し、就業規則を作成・周知しているのであれば従業員はそれに従う必要があります。

秋北バス事件(最高裁昭和43年12月25日大法廷判決) 厚生労働省HPより抜粋

労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない

たいていの会社は就業規則などに始業就業の時刻や勤務の際に守るべきルールなどを定めています。

しかし採用してしばらくすると従業員から様々な要望が出てくることもあります。

特定の従業員の「給与を〇〇円にしてほしい」や「〇〇時には帰りたい」といった要望を実現しようとすると、正常な業務の運営が行えなくなることもありますし、他の従業員の負担が増加することもあります。

声の大きな特定の従業員だけが幸せで、他の従業員が不幸せになるような状況は避けるべきです。

賞罰は勇気をもって経営者自らが行うべき

古代中国の法家である韓非はこう述べています。

自分の嫌いな者がいると、君主の刑罰を行う権限をうまくかすめ取ってその者を罰し、自分の気にいった者がいると、君主の褒賞を与える権限をうまく手に入れてその者を賞する。今かりに、人君たるもの、賞による利益と罰による威力とを自分で与えることができず、その臣下と相談しながら賞罰を行うということなら、国じゅうの人々はすべてその臣下を恐れて君主を軽視し、その臣下に身を寄せて君主からは離れることになるだろう。

韓非 (著)岩波文庫『韓非子 第一冊』

上記の韓非の言葉は「君主」を「会社」や「経営者」に置き換えると分かりやすいと思います。

 

給与の決定や昇給、労働条件の決定、就業規則上の制裁については、勇気をもって経営者自らが判断すべきです。

自分に自信がなかったり、「自分が悪者扱いされたくない」という気持ちから、これらの判断を特定の社員に任せてしまう経営者もいますが、それは自らの経営権を放棄する行為と言えます。

これらの権限を特定の社員に預けてしまうと、私利私欲に走る社員とその社員にとって都合のいい人間だけが残り、真に会社のために働く人間は去っていくか、やる気を失います。

そのような状況が続けば会社はいずれ衰退してしまうでしょう。

 

また会社に対して最終的な責任を持つのは経営者であり、法令に違反した場合に最も大きな責任を問われるのも経営者です。

判断を下したのが社員であっても、第一に責任を問われるのは経営者です。

経営者としての権限を声の大きな特定の社員に奪われ、責任だけを問われるのであれば、経営者であることに何の意味があるのでしょうか。

「雇用保険に加入するのを遅らせてください」は要注意

従業員の要望を聴き入れてトラブルに巻き込まれるケースの一つに雇用保険の不正受給があります。

 

雇用保険や社会保険は法律で加入要件が決まっています。

本人の意思は関係なく、要件を満たす場合は加入しなければなりません。

従業員の好き嫌いで加入を決定するわけではないのです。

 

従業員が「雇用保険の加入を遅らせてほしい」と言ってきた場合は要注意です。

失業給付(基本手当)を受給している人が安定した職業に就き雇用保険に加入すると、その日以降は失業給付(基本手当)を受給できなくなります。

「雇用保険の加入を遅らせてほしい」という人は、給与と失業給付(基本手当)の二重取り(不正受給)を企んでいる可能性があります。

従業員に言われるがまま雇用保険の加入手続きを遅らせた場合、会社側も不正受給の罪に問われることがあります。

法律について説明し、加入手続きを遅らせることはできないと毅然とした態度で伝えましょう。

 

そもそも入社したばかりで会社側に不正行為を唆すような従業員は要注意です。

公平・平等は明確な判断基準と自ら決断することから生まれる

従業員に気持ちよく働いてもらうためには、声の大きな特定の社員を手厚く保護するのではなく、全従業員を公平・平等に扱うことが重要です。

小さな感情の対立を恐れていては、後になって大きな混乱が生じることがあります。

明確な判断基準を持って、「許してはいけないこと」「できないこと」にはNoと言いましょう。

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