労働問題

36協定の過半数代表の選出方法~36協定が無効となるケース~

2020/05/31

こんにちは。

神奈川県鎌倉市の社会保険労務士、北村です。

36協定は正しい手順で締結しないと無効になることがあります。

今回はどんなときに36協定が無効となるのか、考えてみたいと思います。

目次

36協定について労働基準法を読んでみる

36協定は正式には「時間外・休日労働に関する協定届 」といい、1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて労働させる場合に締結する必要があります。

労働基準法には36協定について次のように記されています。

(時間外及び休日の労働)
第三十六条  使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第三十二条から第三十二条の五まで若しくは第四十条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この項において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによつて労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。ただし、坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務の労働時間の延長は、一日について二時間を超えてはならない。

36協定を締結するときは、使用者と次の①または②のいずれかの者で協定を結びます。

労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合

②労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者

キーワードは労働者の過半数です。

よくあるケースですが、労働組合と労使協定を締結したが、その労働組合の加入者が労働者の過半数に達していないことがあります。

この場合、その労働組合は労働者の過半数代表とはいえないため、36協定は無効となります。

どんな場合にに36協定が無効となるのか

また36協定などの労使協定を選ぶ際の労働者の過半数代表を選ぶ方法が適切ではないとして、労使協定が無効となるケースがあります。

どんな場合に労使協定が無効となるのか例を挙げてみましょう

使用者(会社側)が指名した者

当たり前ですが会社が指名した者は、労働者の過半数代表としては不適切です。

「○○君、ちょっとこの用紙にハンコを押しといて」といったやり方は止めましょう。

親睦会や社内サークルの代表者

労働者の過半数代表を選ぶ時は、法律で規定された労使協定などを締結することを明らかにする必要があります。

「36協定を締結するので、みなさんの代表を選んでください」と社員に知らせる必要があります。

親睦会や社内サークルの代表は労使協定を締結するために選ばれたわけではありません。

そのため、これらの組織の代表者と労使協定を締結するのは適切ではありません。

パートやアルバイトなど、一部の社員が除外されている

正社員だけで労働者代表を選ぶなど、一部の社員を除外することは適切ではありません。

パート社員、アルバイト社員を含め、全ての社員が労働者代表を選ぶ過程に参加する必要があります。

労働基準法第41条第2号に規定される管理監督者

労働基準法に規定される管理監督者は労働者の過半数代表としては不適切です。

管理監督者とは簡単に言うと、経営者と一体の立場で働いている人のことです。

管理監督者かどうかは名称や雇用契約からではなく、実態から判断します。

人事権があったり、出退勤の時間について厳格な適用を受けなかったり、一般の社員より給与面などでいい待遇を受けているなどの要素がある場合、管理監督者であると見なされるおそれがあるので注意しましょう。

管理監督者は労働者の過半数代表にはなりませんが、過半数代表の選出には参加できます。

労働者の過半数代表選出の際の投票や話し合いには、管理監督者も含めるようにしましょう。

その事業場・支店・店舗に所属していない人(全ての事業所に共通する労働組合がある場合を除く)

36協定は原則として事業場ごとに締結します。

本社、A支店、B支店と事業場が3つある場合は、それぞれの事業場で締結します。

労働者の過半数代表も事業場ごとに選出することになります。

本社で選出された労働者の代表が、B支店、C支店の労働者代表を兼ねている36協定を見ることがありますが、これは適切ではありません。

【※全ての事業場に共通する労働組合がある場合】

労働組合があり、かつ各事業場の過半数がその労働組合に所属している場合は、その労働組合と労使協定を締結します。

例えば本社、A支店、B支店それぞれの社員の過半数がX労働組合に所属していれば、会社はX労働組合と労使協定を締結します。

この場合は本社、A支店、B支店それぞれの36協定にX労働組合の名称と代表者の名前を記載します。

本社とA支店それぞれの社員の過半数がX労働組合に所属しているが、B支店については過半数がX労働組合に所属していない場合は、本社とA支店はX労働組合と協定を締結し、B支店については労働者の過半数代表を選んで労使協定を締結します。

本社、A支店、B支店を管轄する労働基準監督署が異なっていたり、管轄が同一の労働基準監督署でも届出する日が異なっていると、労働者代表が同一人物でも労働基準監督署が36協定の届出を受け付けることがあります。

労働基準監督署が受け取ったから36協定が有効であるという訳ではないので気をつけてください。

労働基準監督署の受付印・収受印が押印されていることと、中身が適切かどうかは別問題

労働基準監督署の調査の際に労働者代表の選出方法について過ちを指摘され、「監督署の窓口で確認してもらいハンコまで押してもらったのに、なんで今さら問題点を指摘するんだ」と仰る方がいます。

お気持ちがは分かりますが、監督署が押してくれるハンコの文字は「収受」または「受付」になっていると思います。

あくまで書類を受け取っただけで、中身を詳細に確認したという意味ではありません。

これは就業規則についても同じことが言えます。

監督署の受付印、収受印が押印されていることと、中身が適切かどうかは別問題です。

労働基準監督署の職員の立場で考えても、受付の数十秒から数分の短い時間で中身が適切かどうか判断するのは至難の業です。

毎年締結する労使協定だからこそ、時には見直しを

平成25年度労働時間等総合実態調査結果によると36協定を締結している事業場は全体の55.2%とのことです。

法の定めに従って締結した36協定が、法違反になってしまうのは残念なことです。

毎年締結する書類だからこそ、時には内容を確認してみることをお勧めします。

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