社会保険労務士について

個別労関係紛争解決のための"あっせん"と特定社会保険労務士

2020/05/31

こんにちは。

神奈川県鎌倉市の特定社会保険労務士・北村です。

特定社会保険労務士とは何かと聞かれることがあります。

特定社会保険労務士は都道府県労働局などが行っている個別労関係紛争解決のためのあっせんの代理人となることができます。

目次

個別労働関係紛争解決のための"あっせん"とは何なのか?

"あっせん"とは、会社と社員の間のトラブルを解決するための制度です。

会社と社員の間では解雇、パワハラ、セクハラ、賃下げなど、さまざまな問題が発生します。

"あっせん"では労働問題の専門家が、双方の主張を聞いて調停案を提示します。

あっせんについてのパンフレット 職場のトラブル解決サポートします

厚生労働省HP 個別労働紛争解決制度(労働相談、助言・指導、あっせん)

"あっせん"は都道府県労働局や社会保険労務士会などが行っています。

都道府県労働局の紛争調整委員会による"あっせん"は無料

"あっせん"の大きなメリットは費用が格安であることです。

都道府県労働局の紛争調整委員会による"あっせん"の費用は無料となっています。

社労士会労働紛争解決センターによる"あっせん"の費用は2017年11月現在概ね1,080円から10,800円となります。

・・・都道府県労働局はタダ。社労士会は・・・。

いずれせよ裁判や労働審判よりも費用の負担は少なく済みます。

"あっせん"の解決金の中央値は15万6,400円、労働審判の解決金の中央値は110万円

"あっせん"による調停案のほとんどは金銭の支払いとなっています。

独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査によると、2012年度のあっせんの解決金の中央値は15万6,400円となっています。

ちなみに同調査によると労働審判の解決金の中央値は110万円で、あっせんの解決金とは大きな差があります。

"あっせん"開始通知書が来ても、"あっせん"に参加する義務はない

平成28年度の都道府県労働局の紛争調整委員会による"あっせん"の申請件数は5,123件となっています。

このうち"あっせん"が開催されたのは56.8%にあたる2886件です。

申請件数5,123件と開催件数2,886件に大きな差があることを不思議に思う方もいらっしゃると思います。

これは労使のどちらかが不参加の意思を示したからです。

"あっせん"は労使双方が参加しないと成立しません。

労使の一方が"あっせん"を申請しても、もう一方が参加しないこともあります。

"あっせん"の参加は義務ではないのです。

"あっせん"に参加しない場合は、個別労働紛争が労働審判や訴訟の場に移されることが予想されます。

"あっせん"の申請から終了までは約1か月~2か月

"あっせん"は原則として1回(1日)で行われます。

紛争調整委員会は1日で労使双方から事情を確認し調停案を提案します。

"あっせん"の申請から終了までは1か月から2か月となります。

労働審判などに比べて早く結論が出ます。

開催された70%近くが合意に至る

開催された"あっせん"2,886件のうち、合意が成立したのは69.4%の2,003件となっています。

調停案を拒否することもできる

"あっせん"で提案された調停案を拒否することもできます。

拒否した場合は、個別労働紛争が労働審判や訴訟の場に移されることが予想されます。

相手と顔を合わせずに行うことができる

あっせん当日は労使は別々の控室に待機し、あっせん委員を通して双方の主張を述べることになります。

相手と顔を合わせることはないので、精神的な負担は少なくなります。

裁判は公開だが"あっせん"は非公開で行われる

裁判は公開で行わるので、非がなかったとしても企業イメージが低下するおそれがあります。

"あっせん"は非公開で行われるので企業イメージが低下するおそれはありません。

会社側も"あっせん"を申請することもできる

ほとんどのあっせんは労働者の申請により行われていますが、会社があっせんを申請を行うこともできます。

問題社員に注意したものの聞き入れられず、どうにも解決できなくなった場合など、会社もあっせんに問題の解決を求めることができます。

"あっせん"はメリットがある制度だが、まずは当事者間で十分な話し合いを

ここまで見てきたように"あっせん"にはメリットがあります。

しかし"あっせん"を開始する前に、当事者間で十分に話し合いを行うべきです。

 

腹を割って話せば、あっさり解決してしまう問題はたくさんあります。

「腹を割って話したら、あっさり解決」は「社労士あるある」です。

話し合ってもどうにも解決できないと思った時は、"あっせん"の申請など、他の方法を考えましょう。

-社会保険労務士について