労働問題

【働き方改革関連法】「同一労働同一賃金」の導入によって何が起きるのか?

2020/05/31

こんにちは。

神奈川県鎌倉市の特定社会保険労務士・北村です。

平成30年6月30日に働き方改革関連法が成立しました。

今回は法案の中の「同一労働同一賃金」について思うことを書きたいと思います。

高度プロフェッショナル制度が注目されて、同一労働同一賃金についてはあまり報道されていないように感じますが、こちらもなかなか重要な内容になっています。

目次

同一労働同一賃金の本来の意味

「同一労働同一賃金」の本来の意味は「同じ仕事をするのであれば、同じ金額の給料を支払う」ことだと私は理解しています。

今回の働き方改革で使われている「同一労働同一賃金」は、「”正規雇用”と”パート・アルバイトなどの非正規雇用”の間の不合理な格差」を是正する内容となっています。

正規雇用の労働者の間にも「同一労働同一賃金」の問題は存在しますが、それについては今回の働き方改革の対象にはなっていません。

働き方改革で使われる「同一労働同一賃金」は本来の意味からは少し離れたものとなっていますが、非正規雇用の労働者を待遇を改善することは健全な社会の発展のために必要なことだと思います。

総務省の労働力調査によれば平成元年には19.1%だった非正規雇用の労働者の割合は平成29年には37.3%になっています。

働き方改革関連法により何が起きるのか?

「同一労働同一賃金」について今回の働き方改革関連法により次の3つが行われます。

不合理な待遇差を解消するための規定の整備(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)

2 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)

3 行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の概要

厚生労働省HP

正規雇用と非正規雇用の間の格差の是正

1の不合理な待遇差を解消するための規定の整備ですが、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)は次のように改正されます。

改正パートタイム労働法の施行日は2020年4月1日(中小企業への適用は2021年4月1日)となります。

(不合理な待遇の禁止)

第8条 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。

(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)

第9条 事業主は、職務の内容が通常の労働者と同一の短時間・有期雇用労働者(第十一条第一項において「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」という。)であって、当該事業所における慣行その他の事情からみて、当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの(次条及び同項において「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」という。)については、短時間・有期雇用労働者であることを理由として、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、差別的取扱いをしてはならない。

「正社員に支給される手当がパートタイマーに支給されない」ということは現時点ではよくあることですが、改正法では合理的な理由がなければ賃金や待遇に差をつけることができないことをより強調しています。

パートタイマー・アルバイト・有期契約社員への説明義務

2の労働者に対する待遇に関する説明義務の強化については、以下のように改正されました。

(事業主が講ずる措置の内容等の説明)

第14条 事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、第八条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項(労働基準法第十五条第一項に規定する厚生労働省令で定める事項及び特定事項を除く。)に関し講ずることとしている措置の内容について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない

2 事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに第六条から前条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならない。

3 事業主は、短時間・有期雇用労働者が前項の求めをしたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

正規雇用と非正規雇用の待遇に差がある場合、労働者から求めがあれば理由を説明しなければなりません。

もちろん「パートだから」「有期だから」という理由は合理的であると認められません。

説明を求められた場合に答えに窮する事業主も出てくるでしょう。

実務に携わる者の悩み

このブログを読んでいる方、私の人となりを知っている方は、私が格差を是正する政策に賛成していることを知っていると思います。

ただ人事労務の実務に携わる者としては「これから数年は大変になる」というのが正直な感想です。

正規雇用と有期契約社員、パートタイマーなどの非正規雇用の間に賃金や待遇に差を設けている企業は多くあり、これを改善することは容易ではないからです。

これから同一労働同一賃金について労使間の紛争が増加することが予想されます。

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