平成30年度版 過労死等防止対策白書を読んでみる
2020/05/31
こんにちは。
神奈川県鎌倉市の特定社会保険労務士・北村です。
先日、平成30年度版の過労死等防止対策白書が発表されました。
厚生労働省HP
今回は過労死等防止対策白書を読んで、思ったことを記事にしたいと思います。
「法律的に~だ」とか「企業としてこうすべき」ということは書いていないのでご了承ください。
目次
身を養うものを求めてそのために身命をそこなうようなことはせず、利益を求めてそのために肉体を害するようなことはしない
HPやブログに何度も書いていますが、『荘子』に書かれている一文が私の過労死などの問題への考え方の基本です。
生命を尊重することのできる人は、たとい富貴の立場にあっても、身を養うものを求めてそのために身命をそこなうようなことはせず、たとい貧賤の立場にあっても、利益を求めてそのために肉体を害するようなことはしない
荘子(著) 金谷 治(翻訳) 岩波文庫 『荘子 第四冊 外篇』
荘子が生きた紀元前4世紀ごろと比べて、私たちが生きる現代は物質的に豊かになっています。
現代の日本で衣・食・住のために命を落とすようなことはあってはならないと私は思います。
一見、労働時間は減少しているが・・・
過労死の要因の一つに長時間労働が挙げられます。
(画像は平成30年度版過労死等防止対策白書より)
上の図を見ると年間総実労働時間は減少しています。
この減少はパートタイム労働者の増加によるもので、いわゆる正社員の労働時間は減少していません。
白書でも次のように指摘しています。
パートタイム労働者の割合は、近年、増加傾向にあることから、近年の労働者1人当たりの年間総実労働時間の減少は、パートタイム労働者の割合の増加によるものと考えられる
正社員の労働時間は減少していない
第1-2図では正社員とパートタイム労働者の労働時間などが示されています。
正社員の労働時間にあまり変化はありません。
そして平成5年には14.4%だったパートタイム労働者の割合は平成29年には30.8%に増加しています。
正社員の労働時間はどうあるべきか、またパートタイム労働者の増加は社会にとって良いことなのか、考える必要があると思います。
家族や友人のサポート、会社以外のコミュニティーは大事
ストレスを相談できる相手として一番多く挙げられたのが「家族・友人」です。
家族や友人など、職場以外のコミュニティーで助け合うことはとても重要だと感じています。
組織はその組織自体の利益を第一に活動するものだと私は思っています。
組織の利益と働く人の利益が一致しない企業もあります。
働く人の健康が後回しにされることもあるでしょう。
自分が所属する企業に人生の全てを委ねてしまうような生き方は危険だと私は思います。
私たちは職場以外にも自分自身が尊重されるコミュニティーを持ったほうがいいのです。
過労死などの危険にさらされたときに、「SOSのサインを受け取ってくれる人」がいればこれほど心強いことはありません。
ちなみに私が所属する一番小さなコミュニティーは私と妻の二人だけの家族ですが、私たちは「嫌々仕事をするくらいなら辞めていい」ということで合意しています。
「辞めたい」と言ったときに「辞めていいよ」とすぐに言えるように心とお財布の準備をしています。
今のところお互い楽しく働いているので、こうした準備が活きる日は当分先になりそうです。