漫画版『吾妻鏡』を現代の労務管理に結びつけてみる~兼業の禁止と源頼朝・義経~
2020/05/31
こんにちは。
神奈川県鎌倉市の特定社会保険労務士・北村です。
近所に鎌倉中央図書館があり、ほぼ毎週通っています。
毎回1冊は鎌倉に関係する本を借りるようにしています。
目次
漫画版『吾妻鏡』を読む
1月12日、13日、14日の連休は漫画版の吾妻鏡を読んでいました。
吾妻鏡は鎌倉幕府の公式記録で、徳川家康も愛読したようです。
漫画版がたいへん面白かったので現代語訳版も読んでみようと思っています。
なぜ源頼朝は義経を討ったのか?
鎌倉幕府に関する物語と言えば、源頼朝、義経兄弟の関係がまず挙げられると思います。
頼朝がなぜ義経を討ったのか、漫画版の吾妻鏡には分かりやすく描かれています。
頼朝は御家人に朝廷からの任官を断るように命令していました。
この命令は至極当然です。
それまで朝廷で起こった数々の権力闘争に武士が巻き込まれてきました。
これを防ぐには朝廷の権威から独立した武士による組織が必要となります。
頼朝は御家人が朝廷の権力闘争に利用されること、鎌倉幕府の反対勢力となることを憂いていたのです。
義経の不幸は朝廷からの官位を勝手に受け取ったことから始まります。
頼朝の嫉妬から義経は殺されたと言う人もいますが、私はそうでないと思います。
現代に置き換えると、就業規則で兼業が禁止されているにも関わらず、許可なく他社に勤務するといったところでしょうか。
現代の日本政府は兼業を推奨していますが、兼業には情報漏洩のリスクが伴います。
兼業により労働時間が増え、健康被害が出ることもあるでしょう。
本業へのモチベーションが低下することも考えられます。
就業規則で禁止されているにも関わらず兼業を行なった従業員に対して、会社として何の対応も取らないというのは労務管理上ありえないと私は思いますが、みなさんはどうでしょうか。
漫画版の吾妻鏡には頼朝の心を表したセリフが出てきます。
なぜ自ら罠に飛び込む
あの痴れ者めが!
進んで公卿になり法皇の手の中に入る
それこそわしが最も嫌うことだというのに・・・!
竹宮 恵子(著)中央公論新社 『吾妻鏡(中)―マンガ日本の古典〈15〉 』
見るがいい
九郎が残した爪痕を
九郎の勝手な任官を許したまま西海へ赴かせた
田舎武士どもはそれにならって任官する
このわしの推挙を待たずに・・・!
竹宮 恵子(著)中央公論新社 『吾妻鏡(中)―マンガ日本の古典〈15〉 』
九郎というのは義経のことです。
2つ目のセリフにはリーダーの苦悩が表れていると思います。
それなりの地位にある者がルールを破れば下の者もそれに倣います。
これを黙認しては組織運営が成り立たなくなります。
満福寺~義経ゆかりの寺~
ここからは鎌倉についての話題となります。
平家討伐から帰ってきた義経は鎌倉に入ることを許されず、腰越の満福寺に滞在します。
ここで義経は自らの心情を手紙にして頼朝へ送ります。
この手紙は腰越状と呼ばれます。
満福寺には弁慶が書いたとされる腰越状の下書きが展示されています。
満福寺の襖には義経の人生が絵として描かれています。
この襖は素晴らしいので見ることをお勧めします。
満福寺は江ノ電の腰越駅から歩いて3分くらいのところにあります。