「毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する報告書」を読んでみる
2020/05/31
こんにちは。
神奈川県鎌倉市の特定社会保険労務士・北村です。
厚生労働省による毎月勤労統計を巡る不正について、調査報告書が発表されました。
私も報告書をパラパラと読んでみました。
(なんか昨年も同じような文章を書いた気がするな・・・。)
※【お知らせ 2019年1月31日追記】
厚生労働省による毎月勤労統計調査を巡る不正行為問題ですが、第三者委員会による調査に厚生労働省の幹部が同席していたことが分かりました。 幹部同席の調査では中立性を欠いている恐れがあり、報告書の信頼性が疑われる事態となっています。 再調査を行うとの報道もあり、新たな報告がなされる可能性があります。 |
目次
毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する報告書
報告書概要は1ページにまとまっているので、まずそれを読むことをお勧めします。
毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する報告書について
毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する報告書.pdf
毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する報告書概要.pdf
厚生労働省HP
すでに多くのメディアがこの件について、さまざまな意見を述べています。
例によって私がこの件それ自体について、意見を述べることは差し控えます。
このブログでは報告書を読んで思ったことについて書きたいと思います。
組織のガバナンスにおける5つの問題
報告書のP28に、次の文章が記載されています。
さらに、組織としてのガバナンスの欠如についても、指摘せざるを得ない。調査設計の変更や実施、システムの改修等を担当者任せにする管理者の姿勢、安易な前例踏襲主義に基づく業務遂行や部下の業務に対する管理意識の欠如により、統計の不適切な取扱いに気付いても、それを上司に報告して解決しようという姿勢が見られず、また、上司も調査の根幹に関わるような業務の内容を的確に把握しようとせず、長年にわたり漫然と業務が続けられ、結果として、外部からの指摘で初めて問題が公になる。これは、単に統計の問題に留まらず、行政機関としての信頼の問題である。
毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する報告書.pdf[PDF形式:294KB]
※赤字強調は北村による
ここで組織としてのガバナンスの問題として次の5つを指摘しています。
①担当者任せにする管理者の姿勢
②安易な前例踏襲主義に基づく業務遂行
③部下の業務に対する管理意識の欠如
④上司に報告して解決しようという姿勢の欠如
⑤上司も調査の根幹に関わるような業務の内容を的確に把握しようとしない
この5つの問題はコミュニケーション不足を原因としています。
②の前例踏襲主義も新たな意見を取り入れる余地がないという意味で、コミュニケーション不足と言えるでしょう。
この5つの問題は私も身をもって経験したことがあるので、他人事のようには思えません。
みなさんはどうでしょうか?
「"即戦力"であれば指導や教育、コミュニケーションを行わなくてもよい」という思い込み
最近は中途採用、そして新卒採用であっても"即戦力"を求める傾向があります。
"即戦力"という言葉を聞いて私がしばしば思うのは、"即戦力"と言えば、必要な連絡やコミュニケーション、指導や教育を行わなくていいと考える人がいることです。
どれだけ実力があったとしても、働く場所や立場が変われば、新たに情報を集めたり、さまざまな準備をする必要があります。
また、周りが"即戦力"を強く求めれば、失敗できないというプレッシャー、そして失敗を報告できない雰囲気も生じるでしょう。
上司の姿勢は「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」
以前も引用しましたが、山本五十六元帥が次のように言っています。
やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず
人を育てるには時間も労力もかかります。
リーダーや上司が根気よく取り組まなければ人は育ちません。
異なる意見を認める大らかさも必要となります。
ここのところ大きな組織で不祥事が続いていますが、そうした組織には根気や大らかさが欠けているのかもしれないと思いました。