雇用保険

なんちゃって変形労働時間制の怪

2020/05/31

こんにちは。

神奈川県鎌倉市の特定社会保険労務士の北村です。

ゴールデンウィークはいつもの週末と変わらず近所をブラブラして過ごしました。

下の写真の欠片は材木座海岸で拾いました。

いろんな模様があって面白いですね。

休めた人も、休めなかった人も、張り切っていきましょう。

目次

当面の労働時間対策の具体的な推進について

厚生労働省労働基準局長、厚生労働省雇用環境・均等局長から都道府県労働局長に対して「当面の労働時間対策の具体的な推進について」という通達が出されています。

行政が何に重点を置いて労働時間対策を進めていくかが分かる資料なので、興味がある方はご覧ください。

当面の労働時間対策の具体的推進について

厚生労働省HP

1年単位の変形労働時間制の適正な導入・運用

私が気になったのはPDFファイル6ページの変形労働時間制に関する記述です。

 1年単位の変形労働時間制、フレックスタイム制、専門業務型・企画業務型裁量労働制、高度プロフェッショナル制度等の労働時間制度については、導入を検討している事業場が制度を適正に導入・運用できるよう的確な助言を行うとともに、制度が適用される労働者の適正な労働条件が確保されるよう事業主に対する指導を行うこと。

当面の労働時間対策の具体的推進について 厚生労働省HP 抜粋

裁量労働制の不適切な運用はメディアにたびたびとりあげられていますが、1年単位の変形労働時間制の不適切な運用も少なからずあると感じています。

1年単位の変形労働時間制を簡単に言うと、1年を平均したときに労働時間が1週平均40時間以内であれば、特定の日、特定の週において1日8時間、1週40時間の法定労働時間を上回って労働させることができるという制度です。(1年以外の単位でも導入できます。)

もちろん導入するには、就業規則を整備したり、労使協定を締結したり、年間カレンダーなどを作成したりと、法律で定められた手順を踏む必要があります。

詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

1年単位の変形労働時間制導入の手引き

東京労働局HP

1年単位の変形労働時間制=「残業代の支払いが不要」ではない

私がよく遭遇する1年単位の変形労働時間制の不適切運用の事例は、残業代を全く支払わないケースです。

1年単位の変形労働時間制は残業代の支払いが不要となる制度ではありません。

年間カレンダーなどで定めた労働時間を超えて労働させれば、残業代を支払う必要があります。

あらかじめ約束した労働時間を超えて労働させれば、賃金の支払いが必要となるのは容易に理解できるかと思います。

年間カレンダーの労働時間を頻繁に変更する

年間カレンダーで定めた労働時間を頻繁に変更するケースもよくあります。

あらかじめ8時間を定められた労働時間を、業務の都合で10時間に変更し、翌日の労働時間を6時間に変更して帳尻合わせを行うケースです。

頻繁に労働時間の変更を行うようでは、そもそも年間カレンダーなどで確実の労働時間を定める意味が無くなります。

なんちゃって変形労働時間制の怪

不適切な労働時間制を私の周りでは「なんちゃって変形労働時間制」と呼んでいます。

「なんちゃって変形労働時間制」が存在している要因の一つは、就業規則、労使協定、年間カレンダーなどの書類を整備・作成した段階で達成感を感じて、運用面までになかなか気が回らないことにあると思います。

書類を正しく作成するのも重要ですが、制度を正しく運用することも重要です。

また労働者の側には、労働法に関する知識不足から「なにかおかしいとは思うけど、なにがおかしいか具体的に指摘できない」という理由があると感じています。

ただ、これについてはインターネットなどで労働法に関する知識が広まっているので、「なんちゃって変形労働時間制」の不備を指摘する労働者は増えてくるのではないでしょうか。

-雇用保険