随筆・プライベート

『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて(佐藤優著・新潮文庫)』を読んで

こんにちは。

神奈川県鎌倉市の特定社会保険労務士・北村です。

元外務省主任分析官の佐藤優先生の『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて(新潮文庫)』を読みました。

この本はいわゆる鈴木宗男事件に関連して佐藤先生が逮捕され、検察の取り調べを経て判決を受けるまでを記述したものとなります。

内容があまりに衝撃的で、一晩で読んでしまいました。

目次

法律の適用基準が変わる。

『国家の罠』によると、佐藤先生を担当した検事は取り調べの中で以下の発言をしたとされています。

「これは国策捜査なんだから」

「国策捜査は『時代のけじめ』をつけるために必要なんです。時代を転換するために、何か象徴的な事件を作り出して、それを断罪するのです」

「法律はもともとある。その適用基準が変わってくるんだ」

「実のところ、僕たちは適用基準を決められない。時々の一般国民の基準で適用基準を決めなくてはならない」

また佐藤先生の「一般国民の目線で判断するならば、それは結局、ワイドショーと週刊誌の論調で事件ができていくことになるよ」という問いに対し、西村氏は「そういうことなのだと思う。それが今は日本の現実なんだよ」とも答えています。

 

これは本当に恐ろしいことで、法律の適用基準を変えれば、誰もが有罪になる可能性があります。

誰もが叩けば埃がでます。

イエスは罪を犯した女性への処分を問われ、「おまえ達のうち罪を犯したことのない者が、まずこの女に石を投げなさい」と言いました。

人々の中に女性に石を投げることができた者はいませんでした。

現代の世の中を見渡せば、ワイドショーと週刊誌、インターネット、あらゆる場所で人々はお互いに石を投げあっているように思えます。

黒幕は誰なのか?

佐藤先生は有罪判決を受けます。

西村検事ははっきりと「国策捜査」と言ったとされていますが、この国策捜査を企画したのは誰なのか?

それが非常に気になります。

検察自体がこの国策捜査を企画したとは考えにくい。

それでは検察が日本を動かしていることになってしまいます。

背後には大きな権力者がいるのではないでしょうか。

本書の中では明言されていませんが、ヒントはあるように思えます。

事実を主張し続けることはできるのか?

本書を読んでいると「もし自分が国策捜査の対象となったら、どうするか?」と考えてしまいます。

 

佐藤先生は東京拘置所に512日間拘留され、取り調べを受けました。

国策捜査なので100%起訴され確実に有罪となります。

検察はありとあらゆる方法で自らが作り上げたストーリーにあう供述を引き出そうとしてきます。

こうした状況の中で、事実を主張し続けることはできるのでしょうか?

 

僕は無理だと思いました。

検察はプロで、こちらは素人です。

『国家の罠』には「官僚、商社員、大企業社員のようないわゆるエリートは徹底的に怒鳴り上げ、プライドを傷つけると自供をとりやすい。検察が望むとおりの供述をする自動販売機にする」との記述がありますが、閉鎖された空間で、怒鳴り、机を叩き、脅し、宥める、プロに徹底的に揺さぶりを掛けられれば自動販売機になってしまうのも当然ではないでしょうか。

家族のことを考えると・・・

僕には家族がいるので、家族の問題についても考えてしまいます。

もし自分が逮捕されたら、家族が世間からどのような批難を受けるのか・・・。

 

事実を主張し続ければ、いつまでたっても保釈されず、家族に会うことはできません。

一方、検察が望むとおりの供述をすれば、早期の保釈される可能性は高まります。

この選択は想像に絶するものがあります。

一般市民が国策捜査のターゲットになる可能性はあるのか?

いろいろと想像して夜中に恐怖で震え上がったのですが、佐藤優先生によれば「国策捜査のターゲットに一般国民がなることはない」とのことです。

杞憂でしたね。

安心しました。

 

それも当然のことで、僕は現在のところ日本社会に対して何の影響力も持っていません。

カネも権力もないですから。

 

カネも権力もないことは幸せなことですね。

2030年に外交文書が公開され事実が明らかに?

佐藤先生によると2030年に佐藤先生の国策捜査に関連する外交文書が公開されるそうです。

もし検察側の供述調書や承認の証言と異なる事実がそこに記載されていたら、日本の司法と行政にどのような影響を与えるのか・・・!?

2030年といえばあと9年です。

興味深く待ちたいと思います。

ルールの突然の変更、恣意的な運用はどの組織にも起こりうる。

佐藤先生の場合は検察という大きな組織の話ですが、ルールが突然変更されたり、あるいは恣意的な運用をされることは、どの組織にも起こりえます。

メジャーリーグでは、暗黙の了解で認められてきた投手の粘着性物質の使用を今シーズンの途中から厳しく取り締まっています。

 

一般市民の場合、国策捜査によって逮捕・起訴される可能性は少ないですが、突然会社をクビになるくらいのことは起こる覚悟したほうが良いのではないでしょうか。

今この瞬間も貴方を陥れるために着々とルール変更の準備を進めている人間がいるかも・・・。

 

また、組織内のルール変更に限らず、新型コロナウイルスの影響による不況など、予測不能な事由により組織自体が消滅することもあるでしょう。

 

いつでも失う準備、手放す準備をしておいたほうがいいと僕は思ってます。

 

人間は裸で生まれてきます。

いつでも裸に戻れるように準備をするといったところでしょうか。

 

言うは易く行うは難しですね。

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