フリーランス・業務委託・下請け

フリーランス・ノマド・業務委託 その働き方は本当に大丈夫?

2020/05/31

こんにちは。

神奈川県鎌倉市の特定社会保険労務士・北村です。

2017年10月24日に厚生労働省が「雇用類似の働き方に関する検討会」を行いました。

私はこの検討会に強い関心を持っています。

雇用類似の働き方とは、フリーランスやノマドワーカー、業務委託など、労働者ではない立場で働くことを言います。

私は"雇用類似の働き方"は近い将来、社会的な問題となる可能性があると思っています。

目次

"労働者"と"労働者ではない人"

現在の日本には"労働者"と"労働者ではない人"がいます。

まず法律による労働者の定義を見てみましょう。

労働基準法⇒「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者

労働契約法⇒「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者

労働組合法⇒「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者

法律によって定義は異なりますが、他者に使用され賃金を得ている人は労働者であると言えます。

使用されるとは、他人の指揮・命令下に入って労働することです。

契約の内容や名称がどうあれ、実態として一般社員と同じように他者からの指揮や命令を受けていれば、それは労働者に該当する可能性があります。

自称フリーランス、実態は労働者

最近、私の周りにも「フリーランス」や「ノマド」と称する人たちが増えたように感じます。

「フリーランス」という言葉には「自由である」「自立している」「響きがかっこいい」などのイメージがあるようです。

フリーランスの人たちは"労働者ではない人"として活動していますが、その働き方を見ると実態は誰かに使用されている労働者ではないかと思われる人もいます。

本物のフリーランスではなく"自称フリーランス"です。

"労働者"であれば労災保険・雇用保険が適用される

"労働者"と"労働者ではない人"にどのように労働社会保険諸法令が適用されるのか考えてみましょう。

労働者であれば労災保険が適用されます。

仕事が原因で怪我をすれば、労災保険から治療費の給付を受けることができます。

また雇用保険に加入することもできます。

雇用保険に加入していれば、仕事を辞めた場合に失業給付を受け取ることができます。

育児のために休業する場合は育児休業給付金を受け取ることができます。

その他にも労働者はいろいろな保護を受けることができます。

"労働者ではない人"に労災保険・雇用保険は適用されない

フリーランスなどの"労働者ではない人"に労災保険・雇用保険は適用されません。

例えば、私は個人事業主でなので労働者ではありません。

もし私がお客様の会社へ向かう途中で事故に遭っても、労災保険から治療費は給付されません。

よく妻から「労災が無いんだから、事故だけには気を付けてね」と言われます。

また雇用保険も適用されないので、私が社会保険労務士業を廃業しても雇用保険の失業給付を受け取ることはできません。

育児のために休業しても育児休業給付金は支給されません。

個人事業主と年金 平成27年度の国民年金の平均受給額は55,247円(!?)

フリーランスなどの個人事業主は厚生年金に加入することはできません。

国民年金に加入することになります。

国民年金と厚生年金では将来受け取る年金額に大きな差が出ます。

厚生労働省の「平成27年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、平成27年度の厚生年金の平均受給額は月額147,872円となっています。

対して国民年金は月額55,247円です。

国民年金だけで生活をするのは難しいのではないでしょうか。

フリーランスなどの個人事業主は働けるうちに、老後の備えを行う必要があります。

※個人事業主が厚生年金に加入するには法人化するか、厚生年金の適用事業所で労働者として働くという方法があります。(後者は労働者として働くのだからフリーランスではない)

個人事業主と健康保険 病気や出産で働けないときはどうなる?

社会保険の適用事業所に就職し、一定の要件を満たした場合には健康保険に加入することができます。

健康保険には傷病手当金という制度があります。

病気や怪我で働けず十分な給与が支払われない場合は、健康保険から傷病手当金を受け取ることができます。

一方、フリーランスなどの個人事業主が加入する国民健康保険に傷病手当金はありません。

病気や怪我で働けない場合は収入を絶たれる可能性があります。

出産のために働けない場合も同じことが言えます。

健康保険には出産手当金という制度がありますが、国民健康保険に出産手当金はありません。

企業側から見るフリーランス等に業務を依頼するメリット

企業側にフリーランスを活用することに、どのようなメリットがあるのでしょうか?

直接雇用している社員が持っていない能力を獲得できるのはフリーランスなどを活用するメリットと言えます。

またプロジェクトごとに人を集めることができるので、雇用調整弁としての役割も果たせます。

仕事が少なくなっても労働者であれば容易に解雇することはできませんが、フリーランスであればプロジェクトが終了すれば関係は終了します。

そしてフリーランスは労働者と違い労災保険料、雇用保険料、社会保険料がかかりません。

他にも労働者であれば労働社会保険諸法令上さまざまな義務が企業に課されますが、フリーランスを活用する場合はそれがありません。

このような企業側のメリットもあってフリーランスが増えているのだと思います。

welq問題とフリーランス

DeNAが運営したキュレーションサイト「welq」で信憑性の無い記事が掲載されていたり、著作権の侵害が行われていたことが問題になりました。

welqの記事のほとんどはフリーランスと呼ばれる人たちによって作成されていました。

フリーランスは2,000文字で1,000円という報酬で業務を請け負っています。

フリーランスが作成した記事をチェックしていなかったことも問題ですが、2,000文字で1,000円という報酬も適正と言えるのか疑問を感じます。

フリーランスの場合は最低賃金は適用されません。

相手が合意すれば極端に低い価格で仕事を発注することもできます。

あまり費用を抑えれば、安かろう悪かろうとなってしまうことは容易に想像できます。

労働者であるのにフリーランスと主張してワガママを通そうとする人

労働者の中にもフリーランスの意味を取り違えている人がいます。

労働者であるのに「自分はフリーランスだ」と主張する人です。

労働者は労働契約の範囲で使用者の命令に従わなければなりません。

会社から「ラーメンと作れ」と命令されたのに、「私は自由な発想を重んじているのでカレーを作ります」は許されません。

フリーランスという言葉が流行したせいか、労働者であるにも関わらず「私はフリーランスだから、好きな時間に出勤します」「フリーランスだから私のやり方で仕事をします」という訳の分からない発言をする人をちらほら見かけるようになりました。

本物のフリーランスになりたければ、退職して独立し、自分の事業を行ないましょう。

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