労働問題

【働き方改革関連法】2019年4月施行「5日以上の年次有給休暇の取得義務付け(有給休暇の強制取得)」について企業が準備すること

2020/05/31

こんにちは。

神奈川県鎌倉市の特定社会保険労務士・北村です。

働き方改革関連法の成立により、2019年4月から年5日以上の有給休暇の取得が義務となります。

有給休暇の強制取得と呼ぶメディアもありますね。

今回は年次有給休暇の取得義務付けについて簡単にまとめてみました。

お時間があるときにお読みいただき、年明けからの企業活動のお役に立てば幸いと思います。

目次

とりあえず厚生労働省のリーフレットを読んでみよう

いきなり丸投げですが、厚生労働省がリーフレットを公開しているのでそちらもご覧ください。

【厚生労働省HP】

リーフレット「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」

また各種リーフレットなどは下記HPにアップされています。

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」について

法律の条文や行政機関が発行した文書を読むことは大切です。(言い訳ではない)

次のパラグラフからは私なりに重要だと思うポイントについてまとめてみたいと思います。

対象者は年10日以上の有給休暇が付与される労働者

有給休暇の取得義務付けは年10日以上の有給休暇が付与される労働者が対象となります。

正社員はほぼ対象になると言っていいでしょう。

パートタイマーなどの非正社員であっても、年10日以上の有給休暇が付与される労働者は対象となります。

どのような労働者が義務付けの対象となるのか、厚生労働省のリーフレット「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」に分かりやすい表が載っているので引用します。

表の太枠の部分に該当する労働者が有給休暇の強制取得の対象となります。

いつまでに5日以上の有給休暇を取得させればいいか?

各労働者ごとに、有給休暇が付与された日(基準日)から1年以内に5日以上の有給休暇を取得させます。

たとえば、2019年4月1日に入社した労働者は2019年10月1日に有給休暇が付与されることになります。

この労働者に2020年の9月30日までに5日以上の有給休暇を取得してもらいます。

これについても厚生労働省のリーフレット「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」に分かりやすい表が載っているのでご覧ください。

リーフレット「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」は、分かりやすくてよいと私は思います。

基準日から1年以内に5日以上の有給休暇を取得・請求した労働者は対象外

ただし、次の場合は有給休暇の強制取得の対象外となります。

①労働者が自ら5日以上の有給休暇を取得・請求した場合

計画年休により5日以上の有給休暇を取得させる場合

要は基準日から1年以内に5日以上の有給休暇を取得する見通しが立たないときのみ、会社が時季を指定して労働者に有給休暇を取得してもらうことになります。

会社が勝手に有給休暇の取得日を決めていいわけではない

有給休暇の取得日を決める場合、①労働者の意見を聴取し②できるだけ労働者の希望に沿った時季に取得させなければなりません。

有給休暇の取得義務付け、有給休暇の強制取得とは言いますが、会社が勝手に取得日を決めることはできないのです。

実務的には基準日からの1年間に有給休暇を取得する目途が立たない労働者に対して、有給休暇の取得希望日を文書などで提出してもらうなどの方法が考えられます。

余裕をもって取得期限日の3か月前くらいから労働者と有給休暇に関するやり取りをするのがいいでしょう。

あまりにギリギリだと期限内の有給休暇取得が間に合わなくなることも考えられます。

 

え!?

「その文書のひな型はないのか」だって!?

もちろんあります!!

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就業規則を変更する必要はあるのか?

有給休暇に関する事項は法律で定められた就業規則の記載事項です。

そのため有給休暇の取得義務付けについても就業規則に記載する必要があります。

法律の施行日は2019年4月1日なので、それまでには就業規則の変更手続きを済ませておきたいですね。

 

え!?

「就業規則の条文のひな型はないのか」だって!?

もちろんあります!!

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(「もちろんあります!!」は元千葉ロッテマリーンズ現野球解説者の里崎智也さんをイメージしています。NHKで放送している『球辞苑』はおもしろいですよね)

罰則はあるのか?

罰則はあります。

労働者に5日以上の年次有給休暇を取得させなかった場合は30万円以下の罰金となっています。

もともとの休日を労働日に変更し、そこに計画年休をあてることの是非

最近ちょくちょく耳に挟むのは、有給休暇の取得義務付けを乗り切るために、もともとの休日を労働日に変更し、そこに計画年休をあてる手法です。

具体的に言うと以下のようになります。

①12月30日、31日、1月1日、2日、3日の5日間はもともと休み

②上記の5日間を労働日に変更する

③労働日となった12月30日、31日、1月1日、2日、3日の5日を計画年休とする

おお!!こうすると労働日を減らすことなく有給休暇の強制取得を乗り切ることができますな。

セコいですけど。

 

こうした手法は法律の趣旨に反しています。

それに企業は一方的に休日を労働日に変更することはできません。

労働条件を変更する場合には労働者の同意を得る必要があります。

ましてや休日を労働日に変更するのは不利益変更にあたります。

 

今後、このような手法ついて、厚生労働省がなんらかの見解を示す可能性はあると思います。

裁判で争われることもあるかもしれません。

 

労働者は経営者のことをよく見ています。

法律の趣旨に反する手法を使って「セコいやつ」と思われるより、有給休暇を取得させて器の大きなところを見せたほうがよほどいいと私は思います。

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